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男の娘~BL・百合 [性の多様性]

テレビのバラエティ番組などでは主流である「オネェ系」類型の一方で、ライトノベル、マンガ、アニメなどに描かれる性的少数者はどうだろうか。同性愛およびトランスジェンダルな要素を基本的には好む文化的風土という基盤上で、これらのポピュラーカルチャーでは、またちがった特徴的な様相が顕著となっている。特に今世紀に入って以降、この分野でのさまざまな試みは、現実のセクシュアルマイノリティの実際よりも数歩先を行く先進的な取り組みになっているとさえ言える。
日本のアニメにおいては、その源流が『リボンの騎士』のサファイア王子といった草創期の作品にまでさかのぼれるほど、トランスジェンダルな登場人物は珍しくない。以降も『ベルサイユのばら』のオスカル、『ストップ!!ひばりくん』の大空ひばりなどをはじめ、枚挙にいとまがないくらいだ。むろん近年の作品群にも、その特長は受け継がれており、2010年代に入ると、その描かれ方も多様化し、進化している。美少女の姿の少年が活躍する作品群は「男の娘」ものと呼ばれ、人気のジャンルとして興隆している。
このように男女の二元的な区分に収まらないキャラクターをくりかえし目にする機会があることは、視聴者の性別観に作用し、性別概念自体を問いなおす原体験にもなる可能性があるという観点から、おおいに意義があるだろう。
BL(ボーイズラブ)と呼ばれる、男性どうしの性的なものを含む親密な関係性を描いたマンガなども、すでに巨大な市場として認識されている。これらは、おもに異性愛女性の性的ファンタジーに応えるものとして制作されているため、これらに描かれるホモセクシュアルは実際の男性同性愛者の現実を反映したものではないとして批判されることもあるようだが、入手のしやすさから、若いゲイ男性が読者となることも少なくないようである。
女性キャラクターどうしの親密な関係性を物語の主眼に置いた作品群もまた、年々ボリュームを増してきていて、「百合」と言えばジャンルとして通用するようになっている。こちらも作品ごとの方向性は多様であり、現実の女性同性愛を必ずしも反映していないのはBLと同じであるが、やはりレズビアン女性からの一定のニーズはあるようだ。また男性の愛好者が多いのとともに、広く女性全般からも支持があるのは、BLと対比したときの百合の特徴となっているかもしれない。
「BL」も「百合」も、そのポイントは直接的な性的描写ではなく、登場人物どうしの心の襞に触れるような関係性のやりとりだと言われている。それを「異性間」に読み替えるにせよ、「友人」関係に当てはめるにせよ、そうした人間関係のモデルケースを、同性どうしの親密性描写の中から読み取る経験が、多くの人々に共有されることは、やはり異性愛至上主義が相対化されるうえで有意義だろう。
このように、ポピュラーカルチャーに登場するセクシュアルマイノリティ表象は、必ずしも現実世界の状況と写実的につながってはいないとしても、その質と量の双方から、現実に作用してそれを変えていく力を持つだけのものになっている。